さまざまな地域・分野での取り組み
さまざまな地域・分野での取り組み
支援者をほぐす「ケア」、自分たちで実践しよう(滋賀県)
滋賀県立精神保健福祉センター 依存症相談員 栗林悦子(くりばやし・えつこ)
開発者の田中さんとの出会いから2019年にスタートした滋賀県での『問題解決しない事例検討会』は、今年で6年目を迎えます。2023年度は県内7保健所のうち6か所で実施し、これまでの実施回数は17回、参加者数は325名になります。
支援者は、目の前の「困った人」にどう対処しようか、困った「問題」をどう解決しようかと関わりに行き詰まります。しかしこの「問題解決しない事例検討会」に参加すると「目から鱗です」「自分の支援の癖に気付きました」「当事者さんに会いたくなった」等、事例提供者がみるみる元気になります。
結局のところ『問題解決しない事例検討会』は、支援者のアセスメントのあり方や思考をほぐしていく「ケア」のように感じるのは私だけでしょうか。
『問題解決しない事例検討会』は、職種や立場、年齢、上下関係などを取り払って、事例となった方を理解しアセスメントし直す取り組みです。治療や取り組みがスタックしたとき、私たちはいつの間にかその方を見る視点が狭くなり、かたよりがちになります。「この人は○○障害だから言っても無駄だ」「××特性だから私たちの支援の対象ではない」などなど。
「自分たちで実践しよう」を合言葉に、今後ぐんぐん進化していく滋賀にご注目を!!
離島ともつながる、依存症ネットワーク構築推進事業(長崎県)
あきやま病院 副院長 福田貴博(ふくだ・たかひろ)
私が勤務する病院は、長崎県の依存症治療拠点機関、専門医療機関として登録しています。また、離島もある長崎ということで、「複数圏域を対象とした依存症ネットワーク構築推進事業」という事業を県から委託されています。その連携のための連絡会議として、この『問題解決しない事例検討会』を実施しています。
2022年からの2年間で16回開催し、県内外からのべ917人もの参加がありました。定期的に開催することで、顔が見えるだけでなく、互いの考え方や姿勢がわかりあえる、ネットワーク構築が推進できると確信しています。当院では毎月第1金曜日にオンラインで『問題解決しない事例検討会』を開催しています。ご興味を持った方はぜひ遊びに来てみてください。
お申し込みはこちらから
https://akiyamahp.or.jp/education/
子どもにやさしいまちづくりのため、ヒエラルキーのない自由に発言できる場づくりを(熊本県)
NPO法人ポピンズくまもと
ポピンズくまもと-only connect-は、支援者と市民が手をつなぎ、子どもにやさしいまちづくりをめざしています。子どもにやさしいまちとは、虐待や暴力によって、子どもが理不尽に死ぬことのないまちです。一連の活動の中で内外の関係者と事例検討会をしてきました。「どうしても早く答えが欲しい、早く解決したい」また、それを求められるがゆえに、かえって本質から離れていき対応困難事例に仕立てられていく過程を経験してきました。事例検討会自体の検討の必要性を感じていました。ヒエラルキーを無くし、自由に発言できる場づくりを心掛けてきました。
<事例提供者より>
主治医として事例を提供するにあたって、まず私自身がこれまでの経過を読み返し、本人理解の準備をする機会となりました。発言者の質問に答えながら、さらにこれまで気づかなかった本人理解や可能性について多面的に深めることができました。
罪を犯した人も私たちと同じ「ひとりの人間」(司法分野)
弁護士資格保有者 菅原直美
司法分野で支援に携わるとき、例えば放火や盗撮など「犯罪」結果のインパクトが強すぎて支援に困難が生じることは珍しくありません。確かに、起こした結果は裁判を通じて裁かれることになります。しかしその「犯罪」の背景には、貧困や被虐体験、アディクションや孤立など様々な要因があり、「犯罪者」である目の前の人は、同時に適切な支援やケアを必要としている「ひとりの人間」でもあるのです。
『問題解決しない事例検討会』は、罪を犯した人も私たちと同じ「ひとりの人間」であるという、当たり前のことを思い出させてくれます。それだけでなく、その人の魅力や個性、強みに気付かされることもあります。
司法は、社会の中で問題解決を担っているところなのに『問題解決しない事例検討会』ってどうなの?と思われている方も、是非一度私と一緒にやってみませんか。