事例提供者より
事例提供者より
重荷がスーッと軽くなる。いちばん得をするのが、事例提供者
合同会社まかちょーけ(エール総合事務所) 長友博之
「今度の事例検討会でAさんを事例提供してください」と言われて、皆さんどう思われますか?Aさんは、普段からいろいろあって支援も記録も大変!そこに事例検討会の事例提供書を別にまとめるのは負担。そして事例検討会ではAさんに関わる「私」が責められる。そんなネガティブな経験をしていました。
『問題解決しない事例検討会』で事例提供を経験しましたが、この検討会で一番得するのがこの事例提供者だと思っています。居心地の良さというか、事例検討やった!という充実感。準備段階から、事例検討会当日、そして事例検討会が終わってからも。事例提供者を経験することで、私にかかっていた(何層かの)フィルターがポロっと外れた気がしています。そして「やらないといけない」と覆いかぶさっていた重荷がスーッと軽くなり、Aさんと何を語ろう、次いつ会えるだろうと前向きに変化した自分に気づくことができます。
この事例検討会で事例提供したい方に、私もお手伝いしていきたいと思っています。
私たちだって、話したかったし、聞いてほしかったのかも
岡崎医療刑務所 福祉専門官
岡崎医療刑務所は、精神・知的障害を有する障がい者に専門的な治療をする施設です。この度は過去の生活歴や障がい特性から同種事犯を繰り返す対象者に対して、在社会の支援者と次の釈放に向けて方向性が見えない状態でしたので、研究班のメンバーや新しい支援者を招いて『問題解決しない事例検討会』を実施しました。
たくさんの時間をもらって、対象者の話をしながらも、その際に支援に関わる自分の気持ちも話していました。出席した他の支援者も、刑務所に入退所を繰り返している人の話をこんなに聞いてもらったことがなかった、との感想でした(いつも話している途中で断られていると推察)。もしかしたら、立場は少し違うかもしれないけど、同じように話を聞いてほしかったのかもしれません。
支援者同士がゆるくつながることができた、本当に楽しく濃厚な時間でした。
思い悩むのではなく、本人の人柄や生活背景を想像する、心地よい時間
岡部診療所 ソーシャルワーカー 中村茜里
私の勤める精神科クリニックでは日々、さまざまな背景や生きづらさを抱える方たちとの出会いがあります。かかわりにつまずいた時、自分の実践に自信が持てない時には、視野が狭くなり、解決策は何かないのかと焦り、落ち込むこともあります。
『問題解決しない事例検討会』は、問題解決の主体は誰にあるのか?という原点に立ち返り、本人を様々な面から理解していこう、と参加者の皆さんと一緒に話し合います。思い悩むのではなく、本人の人柄や、生活背景を想像する時間はとても心地がよく、気づいた時には心がほぐれ、肩の荷が下りたような感覚になります。人それぞれ、フォーカスの当て方が違うので新たな発見もあり、さらには本人が持っている力を改めて実感できるようにも思います。また『問題解決しない事例検討会』を通してさまざまな立場の方とフラットに話し合う時間を持つことができるのも、大きな魅力のひとつです。
私は、この方に見えている世界を見ているのかな?
国立病院機構久里浜医療センター 看護師 阿部かおり
私は『事例提供者』と、『参加者』というふたつの立場で参加したことがあります。どの立場であっても、事例検討会の終盤には、事例となった「困っている人」に会いたくなり、事例提供者への尊敬の念が自然と溢れます。
日々の臨床に戻ると、患者さんに声を掛ける意図や内容が変わりました。「この方を理解するための情報はこれで十分なのかしら?」「私は、この方が大切にしていることや、見えている世界を見ているのかな?」など、もう一度患者さんに患者さんご自身のことを教えてもらおう、という姿勢になります。
そして、この事例検討会に参加するようになり、人と人とが関わる看護という仕事がより豊かになったように思います。