問題解決しない事例検討会
ここは、『問題解決しない事例検討会』のホームページです。厚生労働省「依存症に関する調査研究事業」の「ギャンブル問題を含めた依存症支援のための新しい地域連携モデルの効果研究」の研究班がつくっています。『問題解決しない事例検討会』ハンドブックや各種資料がダウンロードできるほか、研究班の活動や『問題解決しない事例検討会』に関するいろいろな情報をお伝えしていきます。
研究代表者ごあいさつ
視野が広がりマインドが変わる経験をともに
国立病院機構さいがた医療センター院長/Sai-DATディレクター
佐久間寛之(さくま・ひろし)
みなさま、はじめまして。
本研究班、代表者の佐久間寛之と申します。依存症診療が好きなふつうのおじさんです。
当班は『問題解決しない事例検討会』を普及・啓発するとともに、そのさまざまな効果を調べ、地域連携に寄与することを目的とした研究班です。もともとは厚生労働省科学研究班として出発しましたが、現在は依存症対策全国センター研究事業の一環として行っています。
『問題解決しない事例検討会』は、職種や立場、年齢、上下関係などを取り払って、事例となった方を理解しアセスメントし直す取り組みです。治療や取り組みがスタックしたとき、私たちはいつの間にかその方を見る視点が狭くなり、かたよりがちになります。「この人は○○障害だから言っても無駄だ」「××特性だから私たちの支援の対象ではない」などなど。
そうではないのです。
診断や医学的視点は、その人を支えるための視点の一つに過ぎないのです。私たち医療者や支援者はいつの間にか、その人を理解するために医学的診断を使うのではなく、医学的診断を使ってその人を見るようになっていたのではないでしょうか。何を隠そう、私がそうでした。
『問題解決しない事例検討会』を通じて私は、自分が「医学という狭い穴を通してしか患者を理解していない」という当たり前の事実に気がつきました。そして、自分がのぞいていた狭い穴が、その人を理解する全視野だといつの間にか思っていました。要するに、自分の視野が狭まっていることに気がつかなかったのです。
『問題解決しない事例検討会』を通じて、私たちはその人をさまざまな角度から見つめ直します。その過程で、あなたはきっと自分の視野が広がり、自分のマインドが変わることを経験するでしょう。そしてこの事例検討会の広がりから、多職種が、多機関が、そして地域が連携できることを私は確信しています。
これを読んだあなたにもその輪に加わっていただければ、こんなにうれしいことはありません。
2024年7月10日
開発者ごあいさつ
モヤモヤを一緒に抱えましょう!!
日本福祉大学 田中和彦(たなか・かずひこ)
企画段階では「問題解決しないなんて…」と不満そうな顔も、理念を理解して実際に取り組んでみると「早くこの人(事例に出てくる人)に会いたい!!」と変わる。支援者の構えが緩んで、「なるほど、この人の〇〇はそういう意味だったのかもしれない!」と気づく。支援者がエンパワメントされていく…。
まるで魔法使いのように言われますが、もちろん魔法は使っていなくて、ただただ、対人支援として「目の前にいる人を理解しようとする」というごく当たり前のことにていねいに取り組んでいるにすぎません。
しかし、それが許されないような医療・福祉の現状があります。早く成果を出すことを求められる、結果重視の支援をしてしまう、自己決定を重視したサービス体系により、サービスメニューが充実することで、私たちは「サービスにつなげること」を目的として、結果を追い求めてしまっているのです。そのことは、本来私たちが大切にすべき、クライエントの主体性を阻害し、支援者主導の支援の色を濃くしたとさえ思っています。
『問題解決しない事例検討会』は、とてもシンプルに、事例に登場する人たちの理解を深めていくための仮説づくりに全員で取り組むものです。その人たちを理解するために、様々な視点から光を当てて、これはどうなっているんだろう、どんな状況にあるんだろうという「ひっかかりポイント」に気づいて情報を集めてください。そして、その人の理解を深めるための仮説を豊かに作ってみてください。
仮説なのだから正解しなくても構いません。その一連の取り組みこそが、私たちがその人に近づいていこうとするプロセスです。100%理解しようなんておこがましいことはできません!仮説だから方針も立てません(立てられません)!でも、わからないからこそ、わかろうとする姿勢をもち、支援の中で感じる「モヤモヤ」を解決せずに(笑)、一緒に抱えてみませんか?
皆さまとご一緒に取り組めることを楽しみにしています。