院長あいさつ

院長就任の挨拶

 令和4年4月1日より先代院長、下村登規夫の後任として国立病院機構さいがた医療センターの院長に就任しました、佐久間寛之です。この場をお借りして、皆様にご挨拶申し上げます。
 当院は昭和18年に日本医療団によって創設されました。以後、さまざまな変化を経て現在に至っています。令和4年現在、当院は脳神経内科、精神科、そして重症心身障がい児(者)の診療を行う病院として機能しております。
創設から80年近い年月を経て、医療を取り巻く環境は大きく変わりました。戦後の混乱期から高度成長期、さらにバブル経済期を経験し、現在のわが国は世界にも類を見ない少子高齢化の時代に突入しました。ボリュームゾーンの現役世代の負担による手厚い医療や福祉の提供という従来のモデルは、さまざまな意味で困難になりつつあります。医療費の無駄遣いは許されず、より効果的・効率的な医療のあり方を模索する必要があります。このため個々の病院も経営的な無駄を省きつつ、地域の皆さまの期待に対しいままで以上に誠実に応える必要があります。
 そのためにどうしたらよいのでしょうか。私は、モチベーションとネットワークこそがこの困難な時代を切り拓く鍵だと考えます。どれだけテクノロジーが高度化しようとも、医療は最終的には人が人に手を当てて癒す「手当て」が基本です。よりよい「手当て」を提供するには、医療従事者の高いモチベーションが欠かせません。言いかえれば、病院幹部の仕事はどれだけ職員一人ひとりがやりがいを感じ、胸を張って患者さんに寄りそう仕事が出来るようにするかを考えることです。モチベーションの高いスタッフが質の高いチーム医療を実践することで、より人に優しく、より地域に役立てる効果的・効率的な医療を提供できると考えます。
 もう一つはネットワークです。多職種連携、地域連携などさまざまな言葉がありますが、突き詰めればそれは、いかにいろいろな人や組織と関わりが持てるか、多様なネットワークが組めるかと言うことです。ヒトは社会性の動物です。人は他者との関わりの中で生きており、決して孤立しては生きていけません。病院を一人の人間と見立てれば、孤立したままでは存続することはできず、誰の役にも立てないでしょう。私たちは院内では様々な職種同士が、そして院外ではさまざまな医療機関、福祉や行政など多施設と話し合いコミュニケーションを取りながら、地域と連携して患者さまへの医療や支援を行う必要があります。
 また当院が地域の中で安定した医療を提供し続けるためには、次世代の育成が不可欠です。モチベーションの高い優れた人材を、私たち自身の手で育む必要があります。このため当院ではいままで以上に積極的に若手にチャンスを与え、教育や研修の機会を提供します。同時に新しい取り組みや発案を取り上げ、若い世代にどんどんリーダーシップを取るチャンスを提供します。
 地域医療は、これからますます大きな変化が訪れます。この先、従来の医療を従来と同じ様式で提供していたのでは、病に苦しむ患者さんの役に立てません。従来の枠を飛び越えて病院が地域に飛び出していったり、地域を病院に呼び込んだりと、新しい発想が必要です。時代の変化を嘆くのではなく、時代の変化を受け入れて私たち自身が柔軟に変化する必要があります。
 困難な時代は、新しい発想や取り組みが生まれる時代でもあります。モチベーションとネットワーク、そして次世代育成を掲げ、さいがた医療センターはいままで以上に地域の皆さまのお役に立てるよう努力いたします。
どうか皆さまのご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
令和4年4月1日
独立行政法人国立病院機構さいがた医療センター
院長 佐久間寛之