脳神経内科のご紹介

診療体制

脳神経内科では、神経難病をはじめとして神経疾患全般について広く診療を行っております。
外来は毎日行っております。脳神経内科全般の外来に加えて症状別の特殊外来も行っております。

教育体制

名誉院長を中心とするスタッフ全員が脳神経内科全般について詳しく指導を行う体制をとっています。
入院のみならず外来診療においても、完全なバックアップ体制をとり,万全の体制で臨んでいます。
診療録の記入方法から、実際の診療の仕方(問診・診察・画像・電気生理学的検査など)まで、1例1例を大切にすることをモットーに教育を行います。

研究体制

国立病院機構が中心となって行う大規模研究に参加し、厚生労働省の研究班の研究にも参加しております。
治験研究にも積極的に参加し、国内学会のみならず、国際学会にも毎年研究発表を行っており、研究面でも重要な役割を担っております。

急性肝性ポルフィリン症(AHP)治療について

当院では2021年10月より急性肝性ポルフィリン症治療を行っています。以前まで診断は可能でしたが、ギボシランナトリウムの導入により治療が可能となりました。

急性肝性ポルフィリン症(AHP)とは

急性肝性ポルフィリン症は英語名(acute hepatic porphyria)の略称で「AHP」と呼ばれています。
AHPは「ヘム」と呼ばれる物質を作る過程で必要な酵素(タンパク質の一種)の遺伝子に変異があることで発症する遺伝性の病気です。ただし、遺伝子に変異があるすべての人で発症するわけではありません。
AHP患者さんでは肝臓でヘムを上手く作ることができない為、それを補おうとヘム作りに必要な「ALAS1」という酵素の量が必要以上に多くなってしまいます。その結果、ヘムが作られる途中段階の物質(ALA*1やPBG*2等)が体内で過剰に産生され、これらが神経の働きを障害することにより、腹痛・手足の脱力・便秘・下痢・不安感・頻脈等様々な症状が持続すると考えられています。
一部の薬剤を服用した場合やストレスがかかった場合、また糖質制限ダイエットなどをきっかけに、激しい腹痛が発作的に起こることもあります。
AHPは非常に稀な病気です。腹痛などの消化器症状、手足の脱力や倦怠感といった他の疾患でもよくみられる症状からAHPを疑うのは難しく、診断までに10年~15年かかるとも言われており、診断されずに苦しんでおられる患者さんが多くいると考えられます。

AHPに対する薬物療法

AHPに対する薬物療法として、AHPによる発作を和らげる治療法や、発作や様々な症状の原因となる物質の産生を抑える治療法、様々な症状に対する対症治療などがあります。

治療薬「ギボシランナトリウム」

ギボシランナトリウムは月1回の皮下注射で発作や様々な症状の原因となる物質の産生を抑える治療薬です。
AHP患者さんにギボシランナトリウムを投与すると肝臓におけるALAS1の量が減少します。その結果、ALA*1やPBG*2等の過剰な産生が抑えられ、ギボシランナトリウムを投与しなかった場合と比べて、腹痛等の症状を伴う急性発作が減少し、この効果は、投与を継続することで維持されると考えられています。
症状が抑えられることで、外出や旅行の予定が立てられるようになるなど日常生活が大きく改善します。

「ギボシランナトリウム」による急性肝性ポルフィリン症の治療

急性肝性ポルフィリン症はまずは正しく診断をされることが大切です。腹痛などの消化器症状、しびれや脱力、倦怠感、不安や抑うつといった症状がある方は急性肝性ポルフィリン症を疑って検査を受けてみてください。
急性肝性ポルフィリン症は尿検査で診断ができます。気になる症状のある方は当院にご相談ください。

*1 アミノレブリン酸

*2 ポルフォビリノーゲン