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さいがた医療センター
アディクション(依存症)診療部門
Sai-DAT サイダット
- Saigata Division of Addiction Treatment -

自己治療仮説と生きづらさ

多くの依存症の方が、孤独な生きづらさを抱えています

依存症へのよくある誤解のひとつに、「彼らは依存症を好きでやっている、快楽にふけっている」というものがあります。それはほんとうなのでしょうか。
最新の研究によれば、アディクションは早い時期にはたしかに快楽を感じるものの、病気が進行するにつれ「いやな気持ちを忘れたい」「ストレスから逃れたい」という気持ちが主になってくることが分かっています1)。
まだ脳科学が現在ほど進んでいなかった1985年、心理学者カンティアンは、依存症者が依存にふける理由は苦痛を避けるためであり、自分で自分の落ち込んだ気分を直そうとする、いわば「自己治療」なのではないかという仮説を提唱しました2)。20年以上経った現在、カンティアンの仮説はさまざまな研究で実証されつつあります。
依存症のメカニズムは、まだ十分には解明していません。しかしカンティアンの自己治療仮説は、わたしたちが日ごろ出会う患者さんの状態ともよく一致します。
果てしない快楽を求めて依存行為にふけると言うよりは、止めたくても止められない、ほかにつらい現実を逃れるすべを持たない、そんな方々がほとんどです。
「快楽にふけりたいから」ではなく「苦痛から逃れたいから」アルコールに、薬物に、ギャンブルに、ネットやゲームにのめり込む。そう見れば、彼らの行動への見方が変わってくるのではないでしょうか。
同時に、苦痛から逃れたくて依存行動に走る方に罰やお説教、正論を突きつけても、問題は解決しないであろうことも見えてきます。

また、依存症の方のかなりの割合に、何らかの生きづらさがあります。
両親の離婚、たいせつな人との死別、いじめや学校での不適応、いじめや孤立。
こう言った過去を背景に、人を信じることができず、自分に自信が持てず、将来に人生を託することもできない、そんな生きづらさを抱えて依存を続けている方が多くいらっしゃいます。

わたしたちは自己治療仮説や生きづらさを視野に入れた治療を行っています。

引用文献
1) Koob GF. Addiction is a Reward Deficit and Stress Surfeit Disorder. Front Psychiatry. 2013;4:72.
2) Khantzian EJ. The self-medication hypothesis of addictive disorders: focus on heroin and cocaine dependence. American journal of Psychiatry. 1985;142:1259-1264.